新約聖書 訳と註 3 パウロ書簡 その一

田川建三訳著『新約聖書 訳と註 3 パウロ書簡 その一』。夕食後に少しずつ読み進め、1ヶ月ほどかけて読了。

この翻訳が読める時代・言語圏に生まれて幸運だったと思える。同著者の『書物としての新約聖書』を読んでいると心底そう思う。訳文からも膨大な訳注からも、著者の学問的誠実さがひしひしと伝わってきて、読んでいて清々しく感じる。一方、他翻訳(主に口語訳と新共同訳)の誤りを指摘する際にはかなり頻繁に露骨な嫌味が添えられているので、読んでいて何だか荒んだ気分になってくる……。

この第3巻にはパウロの真筆書簡が収められている。日本では宗教・信仰と言うと『信じるものは救われる』的な考え方が一般的だと思うのだが、パウロ本来の考え方はその真逆と言っていいもので、有り体に言えばもっとずっと「深い」。パウロの書簡の中にはそういう思想的に深いところと、その思想ゆえの自己矛盾と驕りとが隣り合わせになっている。

そういったことは、その筋の人にとっては良く知られた事実なのだろうけれども、一般人が漠然と聖書の本文を読んでいるだけではやはり分からない。翻訳の質がどうという以前に、一言一節の意図を考える一つのきっかけとして、註の存在はとてもありがたい。

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